デジタルツールとの付き合い方

デジタルデバイスと過ごしていると,あっという間に時間が過ぎます.
何も考えることなく,ただ漠然とデジタルデバイスを手にとり,漠然とアプリを開き,漠然とタップを繰り返す.
そんなことをしているうちに気がついたら日が暮れていました.
これは極端かもしれませんが,気がついたら1時間経過していたという経験をした人も多いでしょう.

これは何も漠然と触ってしまった時に限定されません.
目的を持ってデジタルデバイスに触れたとしましょう.
その時,他のアプリや通知が目に入り,目的から外れてしまったことがある人も多いのではないでしょうか.
このようにデジタルデバイスとの接触は,当初の目的の有無に関わらず,ヒトが道具を手に取るように仕向けられ,道具による誘導・介入を受け,その結果望まない結果を招く状況を生み出しています.

これらを踏まえると,デジタルデバイスと接触するということは,ユーザーである僕たちが道具によって提示された選択肢の中を漠然と選び,その中に閉じ込められる危険性を孕む行為であると言えます.

この危険性を避けるための一つの手段はデジタルデバイスを生活や社会の中から排除することです.
しかし,現在の社会生活において,デジタルデバイスを完全に排除するのは現実的ではありません.
日常的に家族と連絡するための電話やメール,SNSアプリは私生活にまで入り込んでいるし,社会における他者とのコミュニケーションを遠隔地で可能としたテレコミュニケーションアプリの存在や,紙の文書を省スペースかつ大容量に保存可能なデジタルストレージは今や欠かすことのできない存在です.

僕は工学系の大学院を出て,今でも工学に関わる分野で研究や開発を継続しています.
デジタルデバイスの利点は理解しているし,非常に魅力的で,技術発展の結晶とも言えるデバイスであることは重々理解しています.
デジタルデバイスを排除しようというつもりもさらさらないし,デジタルデバイスの発展はさらに加速させるべきであるとすら考えています.

でも,考えてほしいのです.
デジタルデバイスを用いる主体であるヒトは,果たしてデジタルデバイスの発展とともに進化しているのでしょうか.
情報リテラシーが叫ばれて久しい現在においてなお,情報と密接に関わるのは難しく,多くの社会問題を引き起こしているのを見ると,やはり人には現在のデジタルデバイスとの接触の仕方を考える必要があるのではないでしょうか.

ここでは僕がデジタルデバイスと接触する時のルールを書きまとめておきたいと思います.
あくまでも現状に過ぎず,これからも改訂や付き合い方を修正していく必要はあるでしょうが,現在の僕の対処法と状況だと思い,参考

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  1. 利用するアプリケーションの数は最小化する.できるだけシンプルなアプリケーションだけを利用し,各種作業を行う.
  2. 便利にすることに注意を払いすぎない.また不便なものは自分に合ったアプリケーションを自作するつもりで小さなアプリを作成する.

スマートフォン

  1. 朝から帰りのバスに乗るまでの間,常に電源を切り,カバンの中に入れておく.
    こうすることで,単純にスマホと接触する時間を減らし,漠然とスマホに手が伸びる状況を避ける.
  2. 完全に禁止し,利用しないことは不利益を被るため,帰りのバスと電車の中では何をしても良いこととする.
    時間制限を設けることと,最も疲れており他の作業や活動が難しい時間にのみ確認を許すことで,”スマホ欲”を発散することを狙う.
  3. 家に着いたらスマホの電源を切り,充電スポットへ置く.
    以降,自宅では触らないこととする.
    スマホでのみ認証などが可能な内容については,同棲相手の承認の元に利用する.
    これで困る可能性が高いのはカメラぐらいだが,もしカメラで困るのであれば,コンデジの導入を検討するのも一案.
    何よりも時間を優先するべきで,時間を生み出すために不便になることは目を瞑ることとする.
    便利はそもそも時間や生産性に基づく話のはずで,それを実現するスマホが時間を奪うなら,多少不便でも時間を生み出すことを優先するべきだろう.
  4. スマホは基本サイレントモードのまま利用する.
    これにより,通知を見ることなく生活を行うことを期待する.
    同時に,通知を見ないことによる不利益がどの程度発生するのかをテストする目的も兼ねる.
  5. ニュース・検索はスマホではなく,家に帰ってからパソコンを用いて行う.

そもそも,スマホでなければならない状況は,それほど多くない.
多くの場合はPCやiPadで対応可能であることから,スマホを1日見ないことが被る不利益はそれほど多くないのではないかと推察する.
ひとまず,現段階ではこのルールで運用する.
本来なくてもいいものだと位置付けられるので,忘れてもOKくらいのつもりで利用するのが良いだろう.

ipad

  1. 論文読み・資料への赤入れ・発表専用機として運用する.
    印刷することのない紙として利用する.

PC

  1. 利用する時は,何をするつもりで利用するのかを手書きノートに書き込んでから利用すること.
    また,利用の終了後には利用時間を書き,その間に脱線等が起こらなかったかなどのログを残し対策を立てること.
  2. 利用途中で再度開くのが面倒だから開きっぱなしにせず,利用の終わったアプリケーションは必ず閉じる.
    これを行うとウィンドウが大量に作成され,利用しようと考えて起動した内容以外に脱線するリスクが高くなる.

おわりに

ここではあくまで現在のデジタルデバイスに対する対処療法としての対策を述べました.
しかし本来こういった問題は,個々人の対処だけではなく,技術開発にも加味されるべき一つの方向なのだと僕は思います.
願わくは,デジタルデバイスの発展が生産性や時間効率などの方向だけではなく,人が人として主導権を取り戻したうえで共存可能なデバイス開発の方向に舵を切ることを,そして共存することによって人が人として幸せに生きられるデバイスを提供できる社会と技術が発達する未来を作っていきたいと思います.

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